Food記(ふ〜どき)

濃厚ぴゅあトマト
水分抑えて果物のような甘さ


標高950m。南国・高知の日差しは強烈だが、空気はひんやりと涼しい、仁淀川町の山中。
ふもとから車で30分以上かけてたどり着いたビニールハウスの前で、生産者の能津(のうづ)伸介さん(44)が出迎えてくれた。


早速、ビニールハウスを案内してもらうと、色づく前の実には、高い糖度の模様がくっきりと浮かんでいた。
「味を濃くするため、水分をぎりぎりまで抑えているんです。」
地面に敷いたシートのすき間から、小石の交じった乾いた土が見えた。


糖度8〜9度を超え、「果物のように甘い」と人気が高まっている高糖度トマト。
雨を避けるためにハウス内で育てると、夏場には平地では温度が上がりすぎてしまう。多くは温度調整がしやすい秋から春にかけて出荷されるが、ここの「ぴゅあトマト」は、夏に出荷のピークを迎える


看護師だった能津さんは、7年前に吾川村(当時)の農業研修生に応募して、高知でのトマトの作り方を学んだ。
一緒に研修を受けた坂東哲顕(てつあき)さん(38)、山諸貴信さん(30)と農事組合法人「スカイファーム」を設立し、「ぴゅあトマト」の生産に力を合わせている。

能津さんが、真っ赤なトマトをいくつか手渡してくれた。特徴を挙げてみると、
★直径は5センチ程度で、普段食べているトマトよりはるかに小さい
★見るからにおいしさがぎゅっと濃縮されているようだ
★かじってみると、甘みだけでなく、酸味もしっかりしている。これなら生で食べても塩はいらない


水を抑えるだけで、こんなにおいしくなるものだろうか。重ねて聞くと「水がいいから」との答え。ビニールハウスまで、わき水を引いているのだという。さらに、にがりをまいているので、木が健康に育ち、ミネラルを含んだおいしい実ができる。


「ぴゅあトマト」を作る5軒の農家から、地元の農協を通じて毎シーズン50トンが出荷される。主な市場は東京大阪京都だが、高知県内の出荷量の2%にも満たないため、上級品は、多くが料理店に納入されるか、通販で売られる

「面積あたりの収量は、普通のトマトの5分の1。それだけ値段も高いが、価値を認める人は買ってくれます」。坂東さんの言葉に静かな自信を感じた。

高糖度トマトひと口メモ
一般的なトマトは、糖度4〜6度程度。
「ぴゅあトマト」は光センサーの糖度計を使い、8度を基準に選果する。
塩分の多い土壌で育て、水の吸収を抑えて糖度を高める栽培法もある。


(飯田祐子)

2006.8.13(日) 読売新聞より参照・引用